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@Canada/Prince*Edward*Island@

第1話

10,5(Sat 10,6(Sun) 10,7(Mon) 10,8(Tue) 10,9(Wed) 10,10(Thr) 10,11(Fri) 10,12(Sat)
→成田→ トロント→→PEI PEI(アンツアー)  PEI PEI→→トロント ナイアガラ トロント→ →成田→

 

「レディースアンドジェントルマン…」

シートベルト着用の機内アナウンスが流れ始め、ランプが点灯した。昨日の午後、成田を出発して約13時間、長い長い空の旅は終着点に達そうとしてい た。1996年10月5日土曜日、カナダ・プリンスエドワード島への旅が今まさに始まろうとしている。私はこれからの一週間を想像すると、ドキドキわくわく胸が躍ってきた。やがて飛行機が着陸体勢に入る。旋回して、いよいよ滑走路が見え始めた。「あと少しでカナダに着く…」しかし本当に着いた!と感じたのは、飛行機の足が滑走路にじゃっと音を立てて着いた瞬間だった。

ゲートを通過し、空港ロビーに入る。私たちはどこをどう行けばいいのか、よくわからずただ黙々と周りの日本人に着いて行くだけだった。スーツケースを受け取り、現地の係員さんを探す。添乗員のない旅行は初めてでどきどきしたが、案外簡単に会うことができた。現地係員さんはやけに元気で軽いノリの30前後のお兄さんと言う感じの人だった。彼は「名前はケンと呼んでください」と言った。ワゴンを飛ばして約30分の間、当時白熱していたセリーグの優勝争いから、野茂選手の試合がテレビで見られるらしいこと、国際電話はクレジットカードでなら簡単にかけられるまで、初対面とは思えないほどの雰囲気で話しかけてくる。トロント市内の超高層ホテルには、あっという間に着いた。ケンは私たちのチェック・インも済ませてくれて、明朝の予定を告げるとさっさと帰ってしまった。部屋はちょっとリッチな雰囲気だが、階が下の方だったので残念なことに街一望はできなかった。この部屋からは隣の高層ビルのオフィスの明かりがよく見える。なんでも、観光客サービスで一晩中ライトはつけたままらしい。それもケンからの情報である。時が夕刻だったので私たちは、ばたばたと簡単に着替えを済ませ、黄昏時のネオンの街に繰り出す。早速、これもケンからの情報を取り入れて、すぐ近くのCNタワーへ向かう。カナダは比較的安全な街と聞いていたが、さすがに日本とは違うので、かなり緊張した。

CNタワーは高さが世界一らしい。ひったくりにでも会わないかとショルダーを手で押さえつつ、きょろきょろしながら行った。ホテルから5分位と言うケンの言葉は正解で、すぐにタワーの頭部が見えてきた。が、入り口がわからなくてあちこち歩いていたら、ようやく見つかった。空はだんだん薄暗くなりかけていた。私たちは窓口で展望台行きのチケットを購入しようと列に並んだが、すべて英語の表示に戸惑ってしまった。わずかに知っている単語の中からtowerの文字を見つけ、「これだ」となんとか片言英語でしゃべってみる。どうやら通じたようだ。手にしたチケットはタワーの絵が描かれている。「よし、まちがってない!」

待つこと30分、いよいよ展望台行きのエレベータに乗る。耳がきゅうんとなる感じがして、もう頭が痛くなるほど高スピードでぐんぐん上っていく。やがて、最上階を知らせるチャイムが鳴った。タワーから眺める夕陽とネオンが交じり合う街は、格別だった。せっかくだからと、2人でカメラを撮り合う。フィルターを覗くと…え、午前7時?… ああ、カメラの時刻が日本時間のままだった!

すっかり日も暮れた頃、ようやくホテルへ帰る。隣のオフィスは既に完全にネオンビルと化していた。さてと夕食…どうしたものか。今回のツアーは、全く食事がついていない。でも、こんなに遅い時間に夕食を買いに行く勇気は二人ともないので、今晩は持ってきたカップメンでしのごうと、ふたを開け始めた。が、日本のように部屋に用意されているポットがない!カップめんのお湯!どうしよう…慌ててホテルのロビーへ行くことにした。ここでも自分のボキャブラリーのなさに頭をかかえる。とにかく単語を並べて、身振り手振りで話す。大柄な体つきのホテルウーマンは、私たちの片言英語から、メモにやかんの絵を描きはじめた。「おお!まさにそれ!」かくして、今夜の夕食は無事終了することができた。しかし明日からのことを考えると、思いやられる…。

 

翌朝、2日目―土曜日の昼に日本を飛び立って、着いて、今日は現地で日曜日の朝を迎えている。いったい日本では何日目になるのだろうかと考えつつ、今日もまた空の旅が私たちを待っていた。

空港で、スーツケースを預ける。友人と倍近くも重さが違う、やたらパンパンな私のスーツケース。…旅行前に渡航歴3回の経験を持つ彼女にアドバイスしてもらえば良かった、とかなり後悔した。重量オーバー料金制度を始めて知り、びくびくしていたが、なんとかクリアできてホッとする。身軽になった二人は、朝食への旅に出かける。近くに運良くバーガーショップがあったのでファーストフード朝食をとった。飛行機に乗るまでに時間があったので、ここではのんびりできた。

そろそろ出発の時刻。ゲートイン。私は、ただ友人に着いていくと言う具合だ。今度は国内線なので、右も左も外人ばかり。出発。まず4時間のフライトにプラス乗り継ぎで、いよいよ憧れの小説『赤毛のアン』の島の舞台―プリンス・エドワード島へ!機内では、バスケット型のランチが出てきた。バゲットバーガーに、生にんじんスティックなど。一風変わっていておもしろかった。四時間は長いように思えて、案外早かった。島まであと一歩、今度は予想以上にも、小さくてかわいいプロペラ飛行機だった。しかも空港ロビーから直接機内に乗るのではなく、いったん外へ出てから階段を上って乗るしくみだ。このプロペラ機を記念にカメラに収めておきたかったが、タイミングを逃してしまった。 「降りる時は絶対に写そうね」二人で決めて、飛行機に乗った。座席はわずか30人程度、スチュワーデスさんの控え室もなさそうだった。やがて飛行機が出発する。今度は30分のフライトだ。プロペラは酔いそうで余り好きじゃないが、街の景色は良く見えた。下は、見渡す限りの海だ。紺碧の青色の海が太陽の陽に照らし出されて、いっそう明るく映えていた。しばらくすると島が見えてくる。ついに来た!プリンスエドワード島。短大時代図書館で『赤毛のアン』シリーズを見つけたのが、始まりだった。それまで『赤毛のアン』については、アニメでしか見たことがなく、シリーズが存在することすら知らなかった私は、この時をきっかけに読破し始めた。そして、この物語の一ファンになったとともに、舞台がカナダの小さな島であることを知り、いつか訪れてみたいと夢見るようになった。あれから5年の歳月が流れた。飛行機は旋回して、空港へ降りていく。例えるならここは、海外の田園風景を想わせる。日本より北に位置するカナダでは、既に紅葉が色づき始めていた。

2人が降りてからまず始めにしたことは、もちろん写真撮影。飛行機の滑走路なのでさすがに躊躇したが、「ここで取っておかないと絶対後悔する!」と周りの目も気にせずにお互いぱちりと一枚。風がきつくてちゃんと写ったか自信はないが、とにかくカメラに収めることができた。この時無理して撮っておいたおかげで、後日大変な後悔をせずに済むことになるのだが…今はまだそこまで、この一枚の貴重さを感じてはいなかったが。


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